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交配品種の組み合わせや飼料の内容、飼育場所・日数などを工夫して付加価値を高めた商標登録済みの豚を銘柄豚と言います。また、銘柄豚を独自にブランディングして名前を付けた豚を、ブランド豚と言います。
ここでは、日本の食卓で多く利用されている三元豚の概要、銘柄豚とブランド豚の厳密な違い、焼肉店でよく見かける銘柄豚・ブランド豚の種類や特徴についてご紹介しています。
スーパーなどでよく見かける「三元豚」という商品名。なんとなく「ブランド豚の一種なんだろう」と思っている方がいるかもしれませんが、「三元豚」というブランド豚は存在しません。
「三元豚」とは、3種類の豚を交配させた雑種の総称です。なおかつ、日本の食卓に並ぶ多くの豚は「三元豚」です。この点を誤解のないようにしておきましょう。ちなみにブランド豚や銘柄豚も、大半は「三元豚」の一種。商品の差別化のため、生産者や団体が名付けた「名前」に過ぎません。
日本において、「三元豚」の交配に使われる主な食用豚の純粋品種は6種類。それぞれの特徴をご紹介しましょう。
原産国はデンマーク。大型の豚で、ややお尻や後ろ脚が大きく、白い毛色が特徴の品種です。繁殖能力が高く多産。乳の量も多いため、子の生育率も高めです。脂身は少なく、赤身の比率が高いことも特徴です。
原産国はイギリス。大型の豚で、やや胴長。毛色は白です。繁殖能力が高く、一頭から生まれる子の頭数は多め。赤身の中に脂身がバランス良く含まれている肉質で、特に加工肉には適した品種とされています。
原産国はアメリカ。やや大型の豚で、上半身よりもお尻のほうが大きめ。毛色は褐色です。繁殖能力が高く、生まれた子豚の成長スピードが早いことも特徴。肉に霜降り(サシ)が入っているなど、肉質の良さも知られています。
原産国はイギリス。中型の豚で、ずんぐりむっくりとした体格。毛色は黒で、日本では「黒豚」という別名でも知られています。産子数は少なめで、子の成長スピードも遅めながら、キメ細かい良質の肉質であることから安定した人気を集めています。
イギリスのハンプシャー州から輸入した豚をアメリカで改良した品種。やや大型の豚で、毛色は黒が中心です。産子数は少ないものの、産まれた子の生育スピードは良好。脂身が少なく、赤身の多い肉質です。
原産国はイギリス。中型の豚で、毛色は白です。繁殖能力が高いものの、子の生育はやや遅め。体が強く丈夫な点が特長です。肉質はやわらかく、脂身の質が良いことで知られています。
三元豚とは、主に上記の食用純粋品種の中から3種類を交配させた豚の総称です。日本では、「ランドレース(L)と大ヨークシャー(W)から生まれた雌豚(LW)」と「デュロックの雄豚(D)」を交配させた「LWD」の三元豚が、市場の大半を占めているとされています。
純粋品種には、それぞれ固有の長所・短所があるため肉質に偏りがありますが、純粋品種を交配させることで、それらの長所・短所を補い合えるため、良質な肉質を安定的に生産することが可能となります。
安定的な生産が可能になることで、結果として生産コストが低下。日本人の口に合う美味しい三元豚が、リーズナブルな価格で安定的に供給されることになります。三元豚として生産することが、生産者にも消費者にもメリットになるということです。
交配する品種の組み合わせ方、飼料の内容や配合率、飼育場所、飼育日数などの様々な工夫を通じて付加価値が高められた商標登録済みの豚を、銘柄豚と言います。
銘柄化に明確な基準はないものの、市場で取引する場合には、一般的な国産豚よりも肉質や味が良いことや安定出荷が可能なことなど、いくつかの条件を満たす必要があります。
ブランド豚とは、牧場や団体、企業などが商品の差別化を図るためにブランド化した銘柄豚のこと。特定の銘柄豚に付けられたオリジナルの「名前」と考えて良いかもしれません。
もちろんブランド化する以上は、通常の銘柄豚以上に飼料や飼育方法にこだわるなど、何らかの付加価値を付ける必要があります。ただし、銘柄豚とブランド豚の定義の上では、明確な違いがあるわけではありません。
こだわりの交配品種であることが銘柄豚の条件となりますが、例外として、上でご紹介したバークシャーは、交配しない純血種のままで銘柄豚と表示することができます。
バークシャーの別名は黒豚。かごしま黒豚という名前でも有名です。うまみ成分であるアミノ酸を多く含み、脂肪の融点が低く口の中で溶けていくのがバークシャーの特徴。生産効率の低い品種ながらも、その肉質の良さで人気のため、生産頭数は増加中です。
産地は鹿児島県。品種は全てバークシャー(アメリカバークシャーを除く)で、他の品種とは一緒に飼育しないことが条件となります。出荷日齢は230~270日。出荷の60日前に、10~20%程度のサツマイモ(甘藷/かんしょ)を混ぜた飼料を与えます。
柔らかさと弾力のバランスが取れた上質な肉質。脂肪の甘さが特徴のブランド豚ですが、全体的に上品な味わいにまとまっています。
おすすめの食べ方はしゃぶしゃぶ。煮立たせた鯛の出汁に薄切り肉をスッとくぐらせ、肉の色が変化したら速やかに引き上げます。
産地は沖縄県。長く沖縄で飼育されてきた「島豚」を起源とする、とても有名なブランド豚です。出荷日齢は240日。あぐー専用の飼料で育てられていることが条件となります。
霜降りが多く、甘み・旨みが強い味わい。一般的な豚に比べて脂肪の溶ける温度が低いため、口の中に入れた瞬間に甘み・旨みがとろけ出すような食べ心地です。
おすすめの食べ方はラフテーなど。ラフテーとは、出汁・泡盛・砂糖・醤油でじっくりと煮込んだ沖縄発祥の角煮です。
アグー豚は、沖縄県の在来豚です。あぐー豚が、アグーの血が50%以下入ったかけ合わせであるのに対し、アグーは在来のアグー豚の血を50パーセント以上有する豚を言います。中には純血種を守る飼育農家もあります。希少な豚肉になります。
脂身がさっぱりしており、豚肉特有の臭みもないため、しゃぶしゃぶなどにすると、アグーの甘味がより活きて、おいしくいただけます。
「るいびとん」というユニークな読み方のブランド豚。ランドレース種、ヨークシャー種、バークシャー種をかけ合わせた品種であることから、その頭文字を取ってLYB豚と名づけられました。かけ合わせに加え、富士農場サービス高原牧場で飼育された品種のみがLYB豚の条件となります。
脂肪の融点が32℃と、一般的な豚の脂肪に比べて6℃ほど低め。さっぱりとした味わいの脂肪で、口の中でとろけるようにふんわりと広がります。
ソテー、生姜焼き、バラ串などで食べるのがおすすめです。
産地は東京都、茨城県、宮城県、山梨県、群馬県。育種改良を経て1997年に日本種豚登録協会に登録された豚ですが、品種の固定的遺伝を踏襲している豚であることがTOKYO Xの条件となります。
繊細な脂肪がキメ細かく差していることが特徴。舌触りが滑らかで脂肪がジューシーですが、食後のしつこさを感じさせることはありません。
おすすめの食べ方はポークソテーなど。塩コショウだけでも美味しくいただけます。
主な産地はスペインのエストレマドゥーラ州とアンダルシア州、およびポルトガルの東部。比較的温暖な地域で飼育される品種です。イベリア種100%純血、またはイベリア種50%以上とデュロック種を交配させ、かつスペイン政府が認証することがイベリコ豚の条件となります。
霜降りが少なく、特に純血種は食感が硬めであることが特徴。交配比率が上がるにつれ、霜降りが多くなって食感が柔らかめになります。
ソテー、しゃぶしゃぶ、メンチカツ、角煮、生姜焼き、生ハムなど、様々な食べ方に適した品種です。
産地は滋賀県で、別名「藏尾(くらお)ポーク」。有限会社藏尾ポークが製造した独自配合の飼料とマイナスイオン水を使い、1頭ずつ与える量を調整しながら丁寧に育てます。出荷日齢は210~240日。飼料の中にバームクーヘンが配合されていることから、バームクーヘン豚という異名が付けられました。
引き締まった肉質・食感で、脂肪の溶ける温度が高いことも特徴。うまみ成分のアミノ酸が多く含まれていることから、口の中全体にまろやかな味わいが広がります。
おすすめの食べ方はしゃぶしゃぶ。繊細で趣きのある味を楽しむことができます。
群馬県を中心に全国80箇所で飼育されているブランド豚。もともと茨城県が系統豚を交配して誕生した品種で、豚そのものだけではなく、飼料や飼育する人、販売している人を指定していることが特徴です。出荷日数は約190日。大麦を15%以上配合した専用飼料で育てられます。
赤身の締まりが良く、適度に良質な脂肪が混在。味わいが濃厚で、旨みを感じやすい品種です。
おすすめの食べ方はキムチ鍋など。キムチの絡み・酸味に、ローズポークの濃い味わいがちょうど良くマッチします。
産地は群馬県、新潟県、秋田県、宮城県、愛知県、北海道などにある全国85農場。産地のグループがそれぞれで独自に品種改良をしたL・W・Dの三元交配で飼育された良質の豚で、かつ特定の農場のみで飼育されたものを和豚もちぶたと言います。
キメの細かい肉質で、滑らかながらも自然な締まりがあることが特徴。脂肪があっさりとしていて、豚特有の臭みがほとんどありません。
ソテーや角煮など、様々な食べ方にマッチ。味噌漬けした和豚もちぶたのソテーも人気です。
北海道十勝地方などで飼育されている希少種「ケンボロー豚」。出荷日齢は175日で、麦類25%以上、芋類10%以上が含まれた植物由来の仕上げ飼料を与えます。防疫を目的に、繁殖農場と肥育農場を分けて飼育していることも特徴です。
肉質が柔らかいことが特徴で、脂質がさっぱりしているので食べ飽きません。栄養学的にはコレステロール値が非常に低く、オレイン酸が多く含まれていることが特徴です。
おすすめの食べ方はトンカツなど。衣でくるんでも、味がさっぱりしているのでしつこさを感じません。
産地は山形県。酒田市にある平田牧場で開発された3品種の交配豚が、平牧三元豚とされています。
飼料に徹底してこだわったブランド豚で、全ての飼料が非遺伝子組み換えの植物性。減反によって余った田んぼで作った米を飼料に配合することから、「米育ち豚」とも呼ばれています。
繊維が細かく弾力のある肉質が特徴。脂身は甘さとコクを感じさせながら、味わいはあっさりとしているので、しつこさがありません。
ソテーやしゃぶしゃぶなど、様々な食べ方にマッチします。
産地は、松坂牛で知られる三重県松坂市。3品種を交配した、いわゆる三元豚の一種ですが、3品種それぞれを何代にもわたって育て上げ、厳選した高品質の親豚を使って飼育したものが松坂豚です。
赤身にキメ細かいサシが入るその見た目は、まるで松坂牛のよう。常温で溶けてしまうほど融点の低い脂肪はにはくどさがなく、豚肉とは思えないような上品な味わいです。
ソテー、しゃぶしゃぶ、すき焼きなど、食べ方を問いません。わさび醤油をタレにした焼肉もおすすめです。
産地は栃木県の寺内牧場。日本に約100頭しかいないとされる希少種「梅山豚」と、イギリスで品種改良された「ケンボロー種」をかけ合わせて誕生した品種です。
繊維が細かく、歯切れの良い柔らかさが特徴。脂身はあっさりとして、一般的な豚肉特有のくどさ、しつこさはありません。
歯切れの良さとあっさりとした脂身が特徴なので、おすすめの食べ方はトンカツ。サクサクとした衣の中からジューシーな肉が現れます。
産地は岩手県花巻市。地元産で非遺伝子組み換えのトウモロコシが主要な飼料で、飲用水には岩手県釜石市で採取したミネラルたっぷりの天然地下水を使用しています。「プラチナポーク」という名でも知られています。
キメ細かい肉質で、やさしい歯ごたえを感じるのが特徴。口の中に入れた瞬間、脂の旨みが一杯に広がります。
おすすめの食べ方は、生姜焼きや冷しゃぶサラダ、トン汁など。脂の旨みが特徴なので、脂が落ちてしまう網焼きなどはおすすめしません。
産地は鹿児島県で、鹿児島市や桜島、大隅半島などのほか、屋久島や種子島、奄美大島など、鹿児島県内で広く飼育。ランドレースの雌と大ヨークシャーの雄から生まれた雌豚と、肉質良好なデュロック種の雄から生まれた品種です。
緑茶粉末とサツマイモを含んだ飼料で飼育しますが、脂がしっかりと付いているにも関わらず、さらっとした味わいが特徴。味の良さだけではなく、栄養価の高さも特徴です。
食べ方の汎用性が広く、しゃぶしゃぶや焼肉などのほか、ローストポークやウインナー、ベーコンなどの加工肉としても多く用いられています。
産地は中国浙江省金華地区で、日本では山形県や静岡県などの限られた牧場で飼育されている希少種。通販やふるさと納税で見かけることはあるものの、流通量が非常に少ないため、一般に入手することは困難な品種です。
「世界三大ハム」の一つとして知られる「金華ハム」の原料で、キメ細かい肉質と上品な甘みが特徴。野菜を中心とした飼料で育てられていることから、脂身が少なめです。
あっさりしていながらコクのある味わいなので、その美味しさを堪能できる調理方法と言えばしゃぶしゃぶ。茹ですぎず、早めに引き上げることがおすすめです。
産地は岐阜県瑞浪市。岐阜県が中心となって開発したデュロック種「ボーノブラウン」を交配させて誕生したブランド豚です。有限会社カタノピッグファーム瑞浪農場で飼育され、関市食肉センターに出荷された豚の霜降り割合を1頭1頭計測し、一定の基準をクリアした個体のみが瑞浪ボーノポークとして認められます。
一般的な豚に比べてドリップロスが少ないことから、肉の旨みが逃げにくいことが特徴。脂の甘みと肉の旨みが強く、豚肉そのものが持つ本来の味を堪能することができます。
味が濃いので、ソテーや焼肉、ハム、ソーセージ、コロッケ、メンチカツなど、どのような食べ方でも美味しくいただけます。
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